Created on August 29, 2023 by vansw

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にかかえたまま。


彼女から何らかの連絡があるはずだ。そう思って、あなたは我慢強く待ち続ける。 というか、 待つ以外にできることはない。しかしどれだけ待っても連絡はない。電話のベルは鳴らず、郵便 受けに分厚い封筒が入ることもない。ドアにノックの音はない。 そこにあるのはただ沈黙、そし て無だ。そのようにして 「沈黙」 と 「無」があなたの身近な友人になっていく。 できれば、あま 友人にはしたくないものたちだ。でもそれ以外にあなたのそばに付き添ってくれる相手は見当 たらない。もちろんあなたは一縷の希望を抱き続ける。 でも重い鈍器にも似た沈黙と無の前では、 希望は影の薄い存在だ。


そのようにぼくは十八歳の誕生日を迎え、 最後の手紙が届いてから更に一年が経過する。 時間 は重々しく、しかし同時にてきぱきと経過していく。里程標がひとつ前方に現れ、やがて後方に 過ぎていく。 そしてまたひとつ。


自分という人間のありようが、ぼくにはどうしても理解できない。どうしてぼくはここにいて、 こんなことをしているのだろう? どうしてここではいつもこんなに強く風が吹いているのだろ う? 自分に向かって何度もそう問いかける。


むろん返事はない。


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