Created on August 29, 2023 by vansw
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「当然じゃありませんか。だってあんたがこの街をこしらえたようなものなんだから」
「なにも私一人でこしらえたわけじゃない」と私は言った。 「ずっと昔、その作業にいくらか手 を貸しただけだ」
「でもあんたの熱心な助力なくしては、ここまで綿密な構築物はできあがらなかったはずです。 あんたがこの街を長きにわたって維持し、想像力という養分を与え続けてきたんです」
「たしかにこの街は、我々の想像の中から生み出されたものかもしれない。しかし長い歳月のあ いだに、街は自らの意思を身につけ、目的を持つようになったみたいだ」
「もうあんたの手には負えないものになっている――そういうことですか?」
私は青い。 「この街は構築物というより、命をもって動いている生き物のように見えること がある。柔軟で巧妙な生き物だよ。 状況に合わせて、必要に応じてその形を変化させていく。そ れはここに来て以来、うすうす感じていたことだ」
「しかし自由に形を変えるとなると、 それは生き物というより細胞か何かのようですね」
「そうかもしれない」
思考し、防御し、攻撃する細胞。
我々はしばらく沈黙する。 私は再び窓の外に目をやる。 壁の外にはまだ煙が立ち上っている。 多くの獣たちが命を落としていったようだ。
「私が毎夜、図書館で読み続けている古い夢とは、いったい何なのだろう?」と私は影に尋ねる。
「それはこの街にとってどんな意味を持っているのだろう?」
影は力なく笑った。「困りましたね。だってそれを毎日読んでいるのは、あんたじゃありませ
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