Created on October 16, 2023 by vansw

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その微笑みも今までと同じものではなかった。 少なくとも私にはそのように感じられた。


明日になって、私がもうこの街からいなくなってしまったことがわかったとき、 彼女はいった いどのように感じるのだろう? いや、と私は思う、私がここからいなくなったときには、その 少女もまたここから姿を消しているのかもしれない。彼女は私ひとりのために街が用意した存在 であったのかもしれない。だから私がここから消えてしまえば、彼女も消えてしまう――それは あり得ることだった。そしてべつの誰かがイエロー・サブマリンの少年の夢読み〉を助けるこ とになる。そう考えると、私はひどく切ない気持ちになった。 自分の身体が半分透明になってし まったような気がした。 何か大事なものが、私からどんどん遠く離れつつある。私はそれを永遠 に失いつつある。


しかしそれでも私の決心が揺らぐことはなかった。私はやはりこの街を出て行かなくてはなら ない。 次の段階に移っていかなくてはならない。それが既に定まった流れなのだ。今では、私に はそのことが理解できていた。この街にはもう私の居場所はないのだ。私が収まるべき空間はな くなっている。 いろんな意味合いにおいて。


やがて少女は私の顔を見つめるのをやめた。 そしていつものように私にくるりと背中を向け、 スカートの裾を翻し、共同住宅の入り口に姿を消していった。 闇に紛れる夜の鳥のように的確に 素速く そこに無駄な動きはなかった。


私はそこに一人で留まり、彼女があとに残していった存在の名残を、長いあいだじっと見つめ


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