Created on October 16, 2023 by vansw
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野放図な躍動を欲しているようだった。そして私にはその気ままな本能的な動きを制御すること ができなかった。 でもなぜそんな見知らぬ兎が自分の内部に突然登場してきたのか、それがいっ たい何を意味するのか、私には理解できなかった。そしてなぜ私の意思と私の心が、それほど相 反する動きを取っているのかも。
その一方で私が送っている日々は、表面的にはどこまでも平穏で乱れのないものだった。
図書館に出向く前の午後の自由なひととき、私はイエロー・サブマリンの少年が外の世界で蓄 積した膨大な量の書物を読んでいった。それは私ひとりのために提供された個人的な図書館だっ た。少年が私のために、 彼の内なる図書館をそっくり開放してくれたのだ。
その高く長大な書棚には、古今東西のあらゆる種類の書物が見渡す限りに並べられていた。 傷 つけられた私の両眼はまだ完全には回復していなかったが、意識の内部に蓄積された書物を読み 取るのに不自由を感じることはない。私は目ではなく、心を使ってそれらの本を読むことができ たからだ。 農業年鑑からホメロス、 谷崎からイアン・フレミングに至るまで。 書物というものが 一冊も存在しないこの街にあって、形を持たない、したがって目には見えない本を、誰に咎めら れることもなく自由に読み続けられること、それは私にとって尽きせぬ喜びだった。
彼が自らの内なる図書館を私に開放し、私がそれらの本を読んでいるあいだ、どうやら少年自 身は深い眠りに就いているらしかった。 あるいは一時的に意識のスイッチを切っているみたいだ った。いずれにせよ、そこにいるのは私ひとりだけであり、そこにあるのは私ひとりだけの時間 だった。その午後の読書のひととき、「私たち」は「私」となった。
それでも私の中にいる春の野原の兎は、その活発な動きをいっときも止めなかった。 その疲れ