Created on October 16, 2023 by vansw

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ん長く続いた冬だった。それ以外の季節がこの街には存在しないのではないかという気がしてく るほどに。だから私としては、春が実際に巡ってきてくれたことに感謝の念を抱かないわけには いかなかった。


そしてその頃には私はもう、イエロー・サブマリンの少年と一体になったことにずいぶん馴染 んでいたと思う。 そこには違和感のようなものはなかった。私たちはひとつの密接な 少年の 言葉を借りるなら 「分け隔てのない」―存在として行動した。 そこに不自然なところはない。 図書館の少女にもおそらくその変化は気づかれなかったはずだ。


夕刻になると、私たちは川沿いの道を歩いて図書館に向かった。 そして私は書庫の机の上で、 両手で古い夢を温めて殻から導き出し、少年はそれを熱心に、貪るように読み込んでいった。 そ れは一体となった私たちがおこなう お互いの存在を意識し合う唯一の「分業」だったが、 その共同作業はあくまで切れ目なく円滑であり、滞るところはなかった。


私たちは今では一晩に六つから七つの古い夢を読破できるようになっていた。その目覚ましい 作業の進捗ぶりは少女をいたく感心させ、喜ばせた。 彼女はその報酬として――おそらくは報酬 なのだろう――林檎の菓子を何度か作ってきてくれた。私たちはそれをおいしく食べた。


「『パパラギ』という本を読んだことはありますか?」


イエロー・サブマリンの少年は私にそう切り出した。 地下深くの小部屋で、私と彼はロウソク の炎を間にはさんで座っていた。


私は言った。「若いころに読んだよ。 かなり以前のことなので、細かいことは思い出せないけ


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