Created on October 16, 2023 by vansw
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その夜、イエロー・サブマリンの少年は私の眠りの中に現れた。
場所は小さな真四角な部屋だった。四方をのっぺりとした壁に囲まれており、窓はひとつもな い。 小さな古い木製の机が部屋の真ん中に置かれ、少年と私はその机を挟んで、向かい合って座 っていた。机の上には、小皿に載せられた小さな細いロウソクが一本あり、私たちの吐く息でそ の炎がちらちらと揺れた。
「ここはどこなんだろう?」と私はあたりを見回してから彼に尋ねた。
「あなたの内側にある部屋です」とイエロー・サブマリンの少年は言った。「意識の底の深いと ころに。あまり見栄えする場所とはいえませんが、ぼくとあなたはとりあえず、ここでしか会っ て話をすることはできないのです」
「ここ以外の場所では、きみに会うことはできない?」
「はい。ぼくらは既に一体の存在になっていますから、簡単に分け隔てることはできません。こ こが二人になれる唯一の場所です」
「でもとにかく、ここに来ればきみに会えるわけだ」
631 第三部