Created on October 16, 2023 by vansw

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みても、自分の中にそれらしい変化は見当たらなかった。 違和感らしきものもない。 そこにいる 私はいつもどおりの私だ。私が私として常々捉えてきた私自身だった。


でも少年が根拠のない、いい加減なことを語ったとは思えなかった。 私の枕元で彼はまぎれも ない真実を語っていたはずだ。彼は全力を尽くして私を説得しようと努めていたし、その目の輝 きは真摯なものだった。 私の左耳を噛むことによって、自分と私とが一体化できると彼は主張し、 それを実行した。私はそうすることに認証を与えた。 そしてその噛み方たるやきわめて一途なも のだった。彼の言う「一体化」はそこで完遂されたはずだ。 それを疑うだけの理由は私には見つ けられなかった。


そう、そのようにして、 深く暗い夜の眠りの中で、私とイエロー・サブマリンの少年とはひと つに混じり合ったのだ。 水と水とが混じり合うように。 あるいは別の言い方をすれば、私たちは もともとの姿に「還元された」のだ。


一体化による変化が身体に感じ取れるようになるには、ある程度の時間の経過が必要とされる のだろうか? その変化が現れるのを、私はただ静かに待ち受けるしかないのだろうか? それ とも「一体化」するというのは、その結果として成立した新しい主体(つまりこの現在の私)に、 内的な変容をいっさい感知させないということなのか? 要するに私という新しい主体にとって、 新しい私自身は隅々まで当然な存在であるわけだから。


私は彼であり、彼は私であると少年は断言した。我々がひとつになるのはどこまでも自然なこ とであり、そうすることによって、私はより本来の私になれるのだと。


私はより本来の私になったのだろうか? これがこうして今あるこの私が本来の私な


笑える 割なみ