Created on October 16, 2023 by vansw

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しません。 そして去る時期が来たと思えば、あなたは立ち去ることもできます。 そう、空を飛ぶ 鳥のように自由に」


空を飛ぶ鳥のように自由に?


しかしいくら懸命に頭を振り絞っても、考えはひとつにまとまらなかった。 意識が次第に霞ん できて、やがて何も考えることができなくなった。どうやら私は再び眠りに入ろうとしているよ うだった。


「眠らないで」と少年は語気鋭く私の耳元で言った。「もう少しだけ起きていて、ぼくに認証を 与えてください。 あなたの左の耳たぶを噛んでもかまわないという認証を。今しかその機会はあ りません。 そしてぼくにはどうしてもそれが必要なのです」


私はひどく眠かった。もう何がどうなってもいいという捨て鉢な気持ちになっていた。一刻も 早く眠りという、心地よい休息の世界に沈み込んでしまいたかった。 誰にも邪魔してもらいたく ない。


いいよ、かまわない、と私は夢うつつの中でつぶやいた。そんなに噛みたいなら噛めばいい。 少年は時を移さず私の左の耳たぶを噛んだ。 歯形が残るくらい強く。


そして私はそのまま深い眠りの世界に落ちていった。


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621 第三部