Created on October 15, 2023 by vansw

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その夜の眠りもまた落ち着かないものだった。


そしてそこからはっと目覚めたとき、枕元に誰かがいることがわかった。その誰かは無言のう ちにじっと私の顔を見おろしているようだった。 刺すようなまっすぐな視線を、私は肌にひりひ りと感じた。もちろん時刻はわからない。 でもそれはとにかく夜のいちばん深い部分だった。 こ れ以上深くはなれないほど深いところだ。


私はベッドに横になったままうっすらと目を開け、そこにいるのが誰なのか見定めようとした。 しかし部屋の暗さに目が慣れるまでに時間がかかった。 窓の鎧戸の隙間から僅かに入ってくる月 の光が唯一の光源だった。 私は相手に気取られないように、鼻でゆっくり静かに呼吸をしながら、 時間をかけて暗さに目を慣らしていった。


しかしそのような暗い部屋の中、どこまでも無防備な状態で、得体の知れない誰かと一緒にい ながら、私は不安や恐怖をまるで感じなかった。心臓の鼓動もおおむね平静を保っていた。 その 安定した鼓動音が、私を落ち着かせてくれた。


どうしてだろう、と私はいぶかる。 真夜中に目覚めると、誰だかわからない誰かが枕元に座っ


615 第三部