Created on October 15, 2023 by vansw
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してそれに合わせるように、 右の耳たぶがより厳しく疼き始めた。
なんとかして元あった生活を取り戻さなくてはならない。あるべき日常に復帰しなくてはなら ない。そのためにはまず耳の傷を癒やさなくてはならない。そしてイエロー・サブマリンの少年
の姿を、脳裏から追いやらなくてはならない。
でもどうすればそんなことができるのだろう?
自分の部屋に戻って服を着替え、ランプを消してベッドに入った。そして頭を空っぽにしよう と努めた。しかし耳の疼きは相変わらず休みなく続いていたし、イエロー・サブマリンの少年の 姿は視野から去らなかった。 その二つの不可解な出来事は、切り離すことのできない一対の存在 として私の中に腰を据えてしまったようだった。
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