Created on October 15, 2023 by vansw
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うずく 4
なぜ今日、彼はそこにいないのだろう?
それは相反する感情だった。 私は彼の存在を求めてはいない。にもかかわらず、その不在に大 いに当惑させられている。 どうしてだろう? でも少年のことを考えるのはやめようと私は思っ た。 できるだけ頭を空っぽにして、図書館に向けて歩き続けた。しかしいつものように頭をすっ かり空白にすることができなかった。イエロー・サブマリンのパーカを着た小柄な少年は、記憶 の残像の中で私をいつまでも見つめ続けていた。
赤々と燃えるストーブの前で、少女は不安そうな目で私の顔を見た。 それから私のそばに寄っ 右の耳をしげしげと見つめ、指先でそっと耳たぶを触った。そして言った。
「なんだか、昨日よりももっと大きく腫れ上がっているみたいね」
「夜のあいだずっと疼いていたよ。おかげでうまく眠れなかった」
「うまく眠れなかった?」と彼女は顔を上げ、眉をきゅっと寄せて言った。 この街ではおそらく それはあってはならないことなのだ。 「ああ、夜中に何度も目を覚ました」
彼女は首を振った。「私のまわりの人たちに、耳たぶのそういう腫れについて尋ねてみた。 で も誰もそんな症状を目にしたことはないみたい。だから原因も治療法も、今のところわからない の。 でも別の種類の軟膏を持ってきたから、今日はそれをつけてみましょう」
彼女はラベルの貼られていない小さな瓶の蓋を開け、濃褐色のべったりとした軟膏を指先に取 り、揉むようにして私の耳たぶに塗りつけた。 ひりひりする感触があった。 最初に彼女がこしら
깨다 깨우라さます
611 第三部