Created on October 15, 2023 by vansw

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その翌日も、少年の姿を目にした。 イエロー・サブマリンのヨットパーカを着た、痩せた小柄 な少年だ。 金属縁の丸い眼鏡をかけている。 髪は耳にかかるくらいの長さ、 手脚は細長くひょろ りとしていた。まともに食事をとっているのだろうかと心配になるくらい。 少年はやはり昨日と 同じように橋の向こう側に立ち、まっすぐ私を見つめていた。何かを訴えかけるように。 ほかに 人の姿は見えない。


その日は川霧はでていなかったので、 彼の姿を前日より明瞭に見て取ることができた。少年の 外見にやはり見覚えはなかった。というか、この街で十代の男の子の姿を見かけたことはこれま で一度もなかったはずだ。 図書館で働く少女を別にすれば、私が街の路上で目にする人々は中年 から老年にかけての成人男女ばかりだった(おそらくそうだと思う。人々はみんなうつむいて、 顔を隠すようにして通りを歩いていたから、身のこなしや体つきから年齢を推測するしかないの だが)。


一瞬、橋を渡っていって彼に話しかけたいという衝動に駆られたが(前日よりも強く)、 やは り思い直してやめた。 この街ではよほど大事な用件がない限り、 人は知らない誰かに話しかけた


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