Created on October 15, 2023 by vansw

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当がつかない。私は本当に何かに噛まれたのだろうか? いや、あとが残るほど強く噛まれたの


なら、いくらなんでも噛まれたときに気がつくはずだ。


しかし噛まれるって、たとえば何に? 動物か、あるいは虫か。 でも私はこの街で、どんな動 物も虫も見かけたことがない (例外は単角獣だが、彼らが夜のあいだにこっそりやって来て私の 耳たぶを噛むとは考えられない)。わけがわからない。


やがて少女は小さな陶器の鉢を持って戻ってきた。縁が小さくかけた質素な見かけの陶器だ。 鉢の中には辛子色のべったりとした軟膏が入っていた。


「即席に作ったものだから、それほど効果はないかもしれないけど、何もつけないよりはいいと 「思う」


彼女はそう言って指に軟膏をつけ、私の耳たぶに優しく柔らかく塗り込んでくれた。 ひやりと 冷たい感触があった。


「君がそれを作ったの?」と私は尋ねた。


「ええ、そうよ。 裏庭にある薬草畑から良さそうなものを選んで」


「ずいぶん物知りなんだね」


彼女は遠慮がちに首を振った。「これくらいのことなら、この街の人ならたいていできるわ。 ここには薬を売っている店なんてないから、自分たちで工夫するしかないのよ」


軟膏を塗り終えてしばらくすると、耳たぶの痛みはいくらかおさまってきた。 ひやりとした感