Created on October 15, 2023 by vansw

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「さっき一人の男の子を川の向こう側で見かけたんだ」と私は彼女に言う。「黄色い潜水艦のヨ ットパーカを着た男の子だ。 君とだいたい同じくらいの年齢だった。その子のことを君は知って いる?」


「ヨットパーカ? 潜水艦?」


ヨットパーカがどんなものかを私は簡単に説明する。潜水艦についても。 彼女がどれほどのこ とを理解したかはわからないが、おおよその見かけを伝えることはできた。


「そんな男の子は見たことがないと思う」と少女は言う。「もし見かけたら覚えているはずだか


「新しくこの街に入ってきた人かもしれない」


彼女は首を振る。 「新しくここに入ってきた人はいない」


「それは確かなの?」


彼女は緑の葉をすりこぎで細かく潰しながら、 こっくりと肯く。 「ええ、あなたのあとにこの 街に入ってきた人はいない。 ただのひとりも」


街の人々は、この街に暮らす他の人々のことを一人残らず知っているようだ。 それ以外の人が 街に現れれば、目につかないわけがない。 そして街の唯一の出入り口は、有能で頑強な門衛によ って堅く護られている。


私にはわけがわからない。だって、私はそのイエロー・サブマリンの少年の姿をたしかに目に したのだから。見間違いや錯覚であるわけはない。しかしとりあえず、その謎の少年のことはそ


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