Created on October 15, 2023 by vansw
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ゆきから突き
行き交
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변한 저녁 안저
務きりのけ
匝務
夕刻、いつものように図書館に向かって歩いて行く途中で、不思議な少年の姿を見かけた。 彼は橋の向こう側に一人でぽつんと立っていた。 川面にはうっすらと夕霧が立ち込めていた。 春の初めにはよくそうして霧が立ち込める。 水温と気温の間に差が生まれるせいだ。 霧のために 私は少年の姿をはっきりと目にすることはできない。しかし彼の着ている衣服はずいぶん特徴的 なもので、それが私の目を惹く。 少年は緑色のヨットパーカのようなものを着ている。 その胸に は黄色いイラストが描かれている。 そこで風が吹いて、 一瞬部分的に霧が晴れ、絵柄が明らかに なる。 丸みを帯びた潜水艦の絵だ。
「イエロー・サブマリン」、ビートルズのアニメーション映画に出てきた黄色い潜水艦。
道を行き交う人々がすべて(といってもそれほど多くではないが)、くすんだ色合いの古びた 衣服を身につけているこの街にあって、色鮮やかなパーカはいやでも人目を引いた。そしてまた、 その少年の姿を目にするのは初めてのことだった。 もし前に一度でも見かけていれば、間違いな く記憶に留めているはずだ。
そしてその少年もまた同じように、こちらをじっと見ているようだった。 でも確かなことは言
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ふるじる
告