Created on October 11, 2023 by vansw

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「それはもちろんかまわないよ。 二人と会って話をするのはね。ただ、捜索の役にはあまり立て ないかもしれない」


「神隠しだから?」


「さあ、それはどうだろう」と私は言った。 「でも話を聞いていると、そのお兄さんたちは、ず いぶん熱心に弟の行方を探し回っているみたいだね」


「二人は、弟さんが姿を消してしまったことを知って、すぐに東京から実家に帰ってきて、途方 に暮れているご両親を手伝って、捜索にあたっているんだって。 長男はしばらく休暇をとって、 次男は大学を休んで。 まだ手がかりみたいなものはなにも得られていないようだけど、とても熱 心に真剣に捜索に取り組んでいるみたいだった。 二人で力を合わせて。なんていうのかな、まる で何かの埋め合わせをするみたいに」


まるで何かの埋め合わせをするみたいに。それはおそらく的確な表現なのだろう。それは少年


の父親と話したときにも、私が内心うっすらと感じていたことだったから。


「ところで今日は月曜日だから、図書館はお休みよね?」


「そうだよ。だからこんな時間に家にいるんだ」


「そうだ、もうひとつ大事なことを言い忘れていたわ」と彼女はふと思い出したように言った。 「どんなことだろう?」


「焼きたてのブルーベリー・マフィンが、さっき入ったばかりなんだけど」


私の頭に、湯気を立てているブラック・コーヒーと、柔らかく温かいブルーベリー・マフィン の姿がぽっかりと浮かんだ。 その光景は、私の身体に確かな躍動を賦与してくれた。 健全な空腹


ふよ


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