Created on October 11, 2023 by vansw

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「一人は二十代半ば、もう一人は二十歳前後というところじゃないかしら」


「じゃあ、若すぎるというほどのことでもないだろう」


「どうもありがとう。 ご親切に」と彼女は感情をほとんど込めない声で言った。em


「それで、彼らと君はどんな話をしたんだろう? 異性としての関心を抜きにして」


「二人はね、実はあの〈水曜日の少年〉 のお兄さんだったの」。


「水曜日の少年?」


「ほら、あなたがいるときに突然店に入ってきて、私の生まれた日の曜日を教えてくれた、風変 わりな男の子よ」


私は持っていた受話器をもう片方の手に持ち替えた。 そして呼吸を整えた。


「あの子のお兄さんたちが君の店にやって来た・・・・・。いったいどうして?」


「二人はいなくなった弟の行方を捜していたの。駅前に立って、プリントアウトしたあの子の写 真を道行く人たちに見せて、この子をどこかで見かけませんでしたかと訊いてまわっていたの よ」


「そして君の店に入って、 コーヒーを注文し、君にも同じことを尋ねた」


「そう、この少年をどこかで見かけませんでしたかって。で、見かけたことはあるって私は答え た。もちろん。そしてそのときに起こったことを簡単に説明した。 彼は私の生年月日を尋ねて、 私が教えると、 それは水曜日だと言った。 あとで調べてみたら、本当に水曜日だった。 でもその


出来事があったのは、彼が神隠しにあう前のことだった。だから捜索の役には立たなかったと思 う」


527 第二部