Created on October 11, 2023 by vansw

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少年はやはり姿を現さなかった。


少年の両親からの度重なる要請を受け、町の警察もさすがに本腰を入れて捜索に乗り出したが、 結局これという手がかりは得られなかった。 イエロー・サブマリンの少年の姿は、その小さな町 のどこにも見当たらなかった。 図書館にももちろん姿を見せなかった。 駅に設置された防犯カメ ラの映像を調べても、彼が電車やバスに乗って町を出て行った形跡はなかった (そのローカル線 とバスが町から出て行くための、ほとんど唯一の公共交通手段だった)。父親の表現を借りれば、 彼は文字通り「煙のように」消え失せてしまったのだ。 母親の知る限り、 少年が家から持ち出し た衣服や荷物はなかったし、現金を所持していたとしても昼食代程度の僅かな小銭に過ぎなかっ た。ただ首を捻るばかりだった。そのようにして二日が経過し、三日が経過した。


彼がどこに行ったのか、少しでも見当をつけることができるのは、おそらくこの私だけだった。 少年は一人で「高い壁に囲まれた街」 への行き方を見つけて(どのようにして見つけたのか、そ れは私にもわからない)、そこに行ってしまったのだ。かつて私がそうしたのと同じように、彼 自身の内側にある秘密の通路をくぐり抜け、別の世界に移動したのだ。


523 第二部