Created on September 25, 2023 by vansw

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「しかしあなたにはそれができない。なぜならば、あなたはその街に行ったことはあるけれど、


行き方を知っているわけではないから」


「そのとおりです」


「ですから、あなたはなにも判断に苦しむ必要などないのです」と子易さんは静かな声で繰り返 した。「つまり、こういうことです。 あなたは自分の見る夢を自分で選ぶことができますか?」 「できないと思います」


「ならば、あなたは誰か他の人のために、その人が見る夢を選んであげることができますか?」 「できないと思います」


「それと同じことなのです」


私は言った。「つまりあなたがおっしゃりたいのは、あの壁に囲まれた街は、私が夢に見たも のに過ぎなかった、ということなのですか」


「いえいえ、そうではありません。 わたくしが申し上げているのは、あくまで比喩の領域におい てのことです。 壁に囲まれた街は間違いなく存在しております。 しかしそこに行くための定まっ たルートがあるわけではない、ということを言いたかったのです。 そこに達する道筋は人によっ てそれぞれに異なっております。 ですから、もしあなたがそうしようと決めたところで、あなた には彼をそこまで手を引いて案内して行くことはできません。 あの子は自分の力で、自分自身の ルートを見いださなくてはならんのです」


「つまり判断に苦しむも何も私には、あの少年がその街に移行するための具体的な手助けをする ことはできない。そういうことですか?」


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