Created on September 25, 2023 by vansw

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に失われ、どこかに消えてしまったものごとなのだ。私は違う成り立ちのイメージをふたつ、勝


手に重ね合わせているだけだ。 それは正しいこととは言えない。


でもほんとうにそうだろうか、と私は思う。それはほんとうに正しくないことなのだろうか?


腕時計の針は十二時少し前を指していた。 私は無人の図書館の奥にある、正方形の半地下の部 屋で、薪ストーブの前に立ち、身体を温めながら物思いに耽っていた。 薪の燃え崩れるがらりと いう音が部屋に響いた。 私はストーブの炎に目をやり、それからもう一度部屋の中を見渡した。 「お待たせをいたしました」と子易さんが言った。


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495 第二部