Created on September 25, 2023 by vansw
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彼女はドアの鍵を開けて、 店の中に入った。そしてカウンターの明かりをつけた。
「また誘ってかまわないかな?」と私は戸口の内側に立って彼女に尋ねた。その言葉もほとんど 意識することなく、私の口からさらりと出てきた。まるでどこかの熟練した腹話術師が、私の口
を勝手に動かしてしゃべっているみたいに。
「もし迷惑じゃなければ、ということだけど」、なんとか自分の裁量でそう付け加えた。
「おいしい夕ご飯をまた作ってもらえるなら」と彼女は生真面目な顔で言った。
「もちろん、喜んで作ってあげるよ」
「冗談よ」と彼女は言って笑った。 「夕ご飯なしでもかまわないから、 また誘って」
「君のお店は何曜日に休むの?」
「毎週水曜日がお休みなの」と彼女は言った。 「他の日は朝の十時から、夕方の六時まで店を 開けている。 あなたの図書館は?」
「毎週、月曜日が休館日になっている。 それ以外の日は、朝の九時から夕方の六時まで開館して 「いる」
「どうやら私たちは、日が暮れてから顔を合わせるしかないみたいね」
「二羽のフクロウのように」
「暗い森の奥の、二羽のフクロウのように」と彼女は言った。
「定休日を月曜日に変更すればいいんだ。 経営者は君なんだから、何曜日に店を閉めようが君の 「自由だ」
彼女は首を傾けて少し考えていた。「そうね。 そのことは少し考慮してみなくちゃ」
487 第二部