Created on September 25, 2023 by vansw

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だあまりよく知らないものだから」


「私もそれほどよく知っているわけではないけど、とくに印象的なお店はないかもね」


私は少し考えてから、ふと思いついて言った。「もしいやじゃなかったら、うちに来ないか? 簡単な料理でよければすぐに作ってあげられるけど」


彼女はしばらく迷っていた。 そして言った。 「たとえばどんなものを作れるの?」


私はその日の昼、冷蔵庫に収めた食材を頭の中にざっとリストアップしてみた。


「小エビと香草のサラダに、イカとキノコのスパゲティみたいなものでよければ。 それに合いそ うなシャブリも冷えている。 この町の店で買えるものだから、それほど上等なものじゃないけ


「聞いているだけで心が惹かれちゃう」と彼女は言った。


彼女は店のドアの鍵を閉め、茶色の革のショルダーバッグを肩にかけた。 そして私たちは暗く なった道を並んで歩き始めた。彼女のブーツのヒールはこつこつという乾いた硬質な音を立てた。 彼女は私に尋ねた。「いつもそんな風に自分でしっかり料理をこしらえているの?」


「外食するのも面倒だから、だいたいいつも自分で食事を作っている。 それほど立派な料理じゃ ない。 手のかからない簡単なものばかりだ」


「一人暮らしは長いの?」


「長いと言えば長いかもしれない。 十八歳で家を離れてからあと、一人暮らししかしたことがな いからね」


「そうか、一人暮らしのベテランなんだ」


ど」


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