Created on August 29, 2023 by vansw
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「おれはここでこのまま死んでいくでしょう。そして獣たちと一緒に穴の中で焼かれるんです。 なたね油をかけられてね。 しかし獣と違い、おれの身体からは煙さえ出ないでしょう」
「ストーブをつけてほしい?」と私は尋ねた。
私の影は小さく首を振った。 「いいえ、寒くはありません。いろんな感覚がだんだん消えてい くみたいだ。 食べ物にももう味がしないし」
「私にできることは何かあるかな?」
「耳を貸して下さい」
私は身を屈め、影の口元に耳を寄せた。影は小さなかすれた声で囁くように言った。 「あそこ の壁に節目がいくつかありますね」
ベッドの向かい側の壁に目をやると、たしかにそこには黒い節目が三つか四つあった。いかに も安普請の板壁だ。
「あれがずっとおれの様子を見張っています」
私はしばらくその節目を見ていた。しかしどう見ても、それはただの古い節目でしかなかった。 「見張るって?」
「そいつらは夜のあいだに位置を変えるんです」と影は言った。 「朝になると、場所が変わって います。ほんとうです」
私は壁の前に行き、節目をひとつひとつ間近に観察してみた。 でも変わったところは見当たら
なかった。荒削りの木材についたひからびた節目だ。
「昼の間はおとなしくしています。 でも夜になると活動を始め、動き回ります。 そしてときたま
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