Created on September 25, 2023 by vansw

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自分の中に採取しているのかもしれない。 しかしブルーベリー・マフィンがいったいどれほどの 情報をその内に含んでいるのだろう? それも私には見当がつかないことだった。 この少年に関 してはわからないことが多すぎる。私はフォークでマフィンを半分に切って、それをもう半分に 切り、その四分の一のマフィンを口に運んだ。


「うん、あたたかくておいしい」と私は言った。 「あたたかいうちに食べるといいよ」


かじ


少年は私がその四分の一のマフィンを食べる様子をじっと見ていた。 子猫たちに授乳している 母猫を見るのと同じような目つきで。 それから手を伸ばしてマフィンを皿から掴み上げ、そのま まがぶりと齧った。 フォークも使わなかった。 かけらがこぼれないように皿を使うこともしなか った。当然ながらぼろぼろとかけらが床に落ちたが、少年はそのこともとくに気にしないようだ った。私もとくに気にはしなかった。 あとで床を掃除すればいいだけのことだ。


少年は三口でそのマフィンを勢いよく食べてしまった。 口を大きく開け、かなり派手に音を立 てて口元にブルーベリーの青みがべっとりとついていたが、そのこともとくに気にはしていな いようだった。 私もとくに気にはしなかった。何もペンキがついたわけじゃない。 ただのブルー ベリーの果汁だ。あとでティッシュ・ペーパーを使って拭き取ればいい。


しつけ


あるいは彼はそのように粗暴に振る舞うことで私を挑発し、 試しているのかもしれない、ふと そう思った。少年は裕福な家に育ったと添田さんから前に聞かされていた。おそらくそれなりの も受けているはずだ。 だとしたら彼はわざと無作法な態度をとって、それに対する私の反応を 見ているのかもしれない。 そのようにして、新しいボールを私のコートに打ち込んできているの かもしれない。それともただ彼はテーブル・マナーみたいなものをまるで理解していない――あ


443 第二部