Created on September 25, 2023 by vansw

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次の休館日の朝、いつものように家を出て、子易さんの墓所に向かった。思いついたように時 折はらはらと雪の舞う肌寒い朝で、解け残った雪が夜のうちに固く凍りついていた。 太いタイ ヤ・チェーンを巻いた大型運送トラックが、 がりがりという耳障りな音を立てて大地を痛めつけ ながら私の前を通り過ぎていた。 吹き下ろす北風が耳に痛く、墓参りに適した気候とはとても言 えそうにない。


しかし週に一度、彼の墓所を訪問するのは習慣的な儀式というだけではなく、今では私には欠 かすことのできない、心の張りのようなものになっていた。 この町における生活の中で、私はそ れをひどく必要としていたのだ。


考えてみれば、子易さんは私にとって、奇妙な言い方かもしれないが、実際に生きているまわ りのどんな人よりも生命の息吹をありありと感じさせてくれる人物だった。この町でというだけ ではなく、これまで私が身を置いたどのような場所にあっても。


私は彼の独特のパーソナリティーに好意を持っていたし、その一貫した生き方に共感を抱くこ とができた。 子易さんにとって運命は決して優しいものとは言えなかったが、彼は自己憐憫に陥


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