Created on September 25, 2023 by vansw

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ません。いつもの席でいつもと同じように熱心に本を読んでいます」


「ありがとう」と私は礼を言った。 「ところで彼は今、どんな本を読んでいるんだろう?」


「ドミトリ・ショスタコビッチの書簡集です」と添田さんは即座に答えた。


「愉しそうな本だ」


添田さんはそれに対して意見は述べなかった。 眉をほんの少し寄せただけだった。彼女は言葉 でよりは表情や仕草で、より多くを語る女性なのだ。


429 第二部