Created on September 25, 2023 by vansw
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もし子易さんと少年がどこかで意思を通じ合わせ、 力を合わせて動いていると仮定するなら、 地図の作成作業に子易さんの意思は関与しているのだろうか。 地図を私のもとに送り届けたこと に、子易さんの意図は含まれているのだろうか。 そうだとしたら、それはいったいどのような意 図なのだろう?
疑問は多く、確かな答えは見当たらない。意味のつかめないことだらけだ。目の前に並んだ多 くの謎のドア、しかし鍵穴に合う鍵が手元に見つからない。かろうじて理解できるのは(あるい はうっすらと知覚できるのは)、その地図には何か普通ではない、特殊な力が働いているらしい、 ということくらいだ。 それは私が過去に一時期滞在した謎めいた場所の地図というにとどまらず、 来たるべき世界の地勢を示唆する、見取り図としての役割を果たしているようでもあった――地 図を見つめながら、私はそこに何かしら個人的に託されたものを感じ取らないわけにはいかなか った。
部
図書館に設置されたコピー機を使って地図のコピーをとり、コピーしたものの方に、気がつい たいくつかの訂正点を鉛筆で書き込んだ。 図書館の位置が広場に近すぎる、溜まりの直前の川の 蛇行が緩やか過ぎる、単角獣たちの住んでいる土地はもう少し広い・・・・・・そのようなことだ。 全部 で七点。どれも比較的細かい相違で、街の構造の大筋に関わることではないし、あえて訂正を促 す必要もないのだろうが(それに私の記憶だって、どこまで正しいものなのか?)、少年はそれ がどれほどのことであれ、細部の正確さを何より尊ぶだろうという予測が私にはあった。そして
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