Created on September 25, 2023 by vansw

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翌日、イエロー・サブマリンの少年は終日、図書館に姿を見せなかった。 それはかなり珍しい 出来事だった。


「今日は彼は来ていないみたいだね」と私は閲覧室を一通り見回してから、カウンターに座った 添田さんに尋ねた。


「ええ、今日は来ていないようです」と彼女は言った。「そういう日もたまにあります。 身体の 具合があまり良くないのかもしれません」


「そういうことはときどきあるの?」


「定期的に起こるようです。 何か持病があるというのではないのですが、体調がすぐれず、身体 に力が入らなくて、寝床から起き上がれません。母親の話ですと、 神経的なものではないかとい うことです。それで三日か四日ベッドに横になって何もせず安静にしていると、自然に回復して いくのだと。お医者に診てもらったりする必要もなく」


「三日か四日、ただ静かに横になっている」


「ええ、切れてしまったバッテリーを充電するみたいに」と添田さんは言った。


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