Created on September 25, 2023 by vansw
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月曜日の朝に町外れの墓地で、墓石の陰にその姿を見かけたあと、少年は私という存在に以前 よりも関心を持つようになったらしかった。 少なくともそういう気配を私は感じた。 何か特別な 出来事があったわけではない。 彼がじろじろと私を観察したりしたわけでもない。ただその視線 が一瞬ちらりと私に向けられるのが、時折感じ取れたということだ。 多くの場合、背後から。で もその一階には不思議なほどの重さと鋭さがあり、それは私の上着の生地を抜けて背中の肌にま で達するかのようだった。 しかし敵意や悪意のようなものは感じられない。 そこにあるのはおそ らくは好奇心だ。
あるいは彼は私が 生前の子易さんに会ったこともないこの私が子易さんの墓参りをし ていることに、少しばかり驚いたのかもしれない。 そしてまた私が子易さんの墓に向かって長い 独白をおこなっていたことに。そのことがおそらくは彼の関心を惹いたのだろう。
私が子易さんの墓石に向かって語った話の内容を、彼がどこまで耳にしたのか、私にはわから なかった。 でもすべてを聞いていたとしても、まったく聞いていなかったとしても、どちらでも
405 第二部