Created on September 21, 2023 by vansw
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私はカウンターにいる添田さんを事務室の近くに呼んで、その少年の座った席の方をそっと指
「あの子のことだけど」
「なんていうか、彼はいわゆるサヴァン症候群みたいなものなのかな?」
さんは私の顔を見て言った。「ひょっとして、生年月日を訊かれました?」
私は一部始終を説明した。
添田さんはそれを聞き終えると、無表情に言った。「ええ、あの子はよく人に生年月日を尋ね はかけませんし、問題を起こすこともありません。 それに一度尋ねた人には二度とは尋ねませ
「いいえ。 誰にでもというわけではありません。 いちおう選別して尋ねているようです。 相手に
「なるほど」と私は言った。あまり普通ではないことだが、添田さんが言うように、それで面倒
な問題が生じるとも思えない。結局のところ、ただの生年月日とただの曜日だ。
「ところであなたの誕生日は何曜日でした?」
「水曜日」と私は言った。
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