Created on September 17, 2023 by vansw
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られていた。もともと実質的には子易さんの個人図書館のようなものだったから、これまでは 様々な案件を彼が一人で適宜決めて取り仕切っていたし、誰もそれに疑義を呈したりはしなかっ た。しかし子易さんがいなくなった今では、もちろんそう単純に事は運ばない。ある程度みんな を納得させつつ運営をおこなっていく必要があった。 そしてそのための新しいシステム作りを、 私が中心になって進めていかなくてはならないわけだが、それはどう見ても容易い仕事ではなか った。ひとつには私がまだこの図書館の、そしてまたこの町の事情に不案内だったからだし(多 くの面で添田さんの助力を仰ぐ必要があった)、それに加えて、そういった種類の実務的な作業 を私は生来苦手としていたからだ。
そのような細々とした作業を日々進めながら、その合間に私は、子易さんについて先日添田さ んと交わした長い会話を、ひとつひとつ順序立てて思い起こし、その要点をボールペンでメモに 列挙していった。何か見落としがないように、大事なポイントをうっかり忘れたりしないように。 そしてそのメモを読み返しながら、 それぞれの要点に関して自分なりの考えを巡らせた。
わからないところは数多くあった。 そう、数え切れないほどあった。
添田さんが口にしたように、自分がほどなく命を落とすことが、子易さんには前もってわかっ ていたのだろうか? それを予知していたからこそ、デスクの抽斗に遺言状を残し、自分の死後、 全国から図書館長を募集するようにという指示を与えていったのか? そのようにして(既に死 者となっている) 自らが後任者を選択できるように、段取りを定めていったのか? すべては予 見され計画されていたことなのか?
そしてひょっとして、この私がそれに応募していることすら、彼にはわかって
こまごま
357 第二部