Created on September 15, 2023 by vansw

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羽目をはずす VADDI


도를 지나치다



여행자. たびびというより)


筋の父親とはどうしてもそりが合わず、また当然ながら酒造業の経営にも今ひとつ身が入らず この田舎町での生活は彼にとってまったく満ち足りたものではなかった。空いた時間に読書をし、 机に向かって原稿を書くことがただひとつの楽しみだった。


素封家の一人息子だったから、縁談は数多く持ち込まれたが、彼は身を固めることを嫌って、 長いあいだ独身を通した。 世間体もあり、また父親の目もあり、生まれ故郷の町ではさすがに素 行を慎んでいたが、噂によれば時折東京に出かけた折には、日頃の不満を解消するべくけっこう 羽目を外したということだ。


三十二歳になったとき、酒好きの父親が脳梗塞で倒れ、寝たきり状態になり、彼が実質的に経 営を受け持つことになった。とはいえ、仕事の実務は古くから働いている忠実な番頭や従業員た ちが引き受けてくれたから、ただ奥の部屋に腰を据えて適宜必要な指示を出し、帳簿を簡単に点 検し、同業者の会合に顔を出したり、町の有力者と会食をするといった外交的な用件をこなして いれば、それでは足りた。刺激の乏しい退屈な日々ではあるものの、うるさいことを言う父親 はろくに口もきけない身体になってしまったし、経営は――彼がとくに熱心に働かなくても 安定した良好な状態を続けていた。 まずは気楽な境遇と言えた。


暇な時間には相変わらず好きな本を読み、机に向かって小説のようなものを書き綴ってはいた。 が、一時は激しい炎として彼の内部で燃え上がっていた創作への意欲は、三十歳を過ぎた頃から、 次第に弱まっていったようだった。 旅人が自分でも気づかぬうちに、大事な意味を持つ分水嶺を 踏み越えてしまったみたいに。 原稿用紙にまったくペンを滑らせない日々も、次第に数を増して いった。


おく


空くあく日


정성을 쏟아 하다


のうこうそく


身が入る


あがはいる


ちょうぼ