Created on September 12, 2023 by vansw

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山間さんかん


やまあい둘다가능하지만


やまあいつ


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一日また一日と冬は深まっていった。 年の終わりが近づくにつれ、子易さんが予言したように、 その山間の小さな町には雪が頻繁に降るようになった。 厚い雪雲が次々に北からの風に流されて きた。 あるときには素速く、 あるときには動きが目に映らないくらいゆっくりと。


朝になるとあたり一面に霜柱が立ち、私の新しい雪靴の下で張りのある気持ちの良い音を立て た。それは床に落ちた砂糖菓子を踏みつけたときの音に似ていた。その音が聞きたくて、朝の早 い時刻に用もなくよく川べりを歩き回ったものだ。私が吐く息は空中で白く硬い塊となり(その 上に字が書けそうなほどだ)、朝の澄み切った空気は無数の透明な針となって肌を鋭く刺した。


そのような日々の厳しい寒さは、私にとってはもの珍しいものであり、また心地よく刺激的な ものでもあった。 これまでとは違う成り立ちの世界に足を踏み入れたのだという新鮮な感触がそ こにはあった。私の人生は何はともあれ居場所を変更したのだ。その変更された環境が私をこれ からどのような方向に導くのか、 まだ見定められないにせよ。


夜が明けたばかりの川べりには、まだ誰の足跡にも汚されていない純白の雪野原が広がってい た。降雪量はまだたいしたものではなかったが、 それでも常緑樹の青々とした広い枝は、夜のう


277 第二部