Created on September 11, 2023 by vansw

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に図書館が購入する新刊書籍を、与えられた予算内で選択しなくてはならない。決定権はいちお う私に委ねられているが、 もちろん私個人の好みだけで図書館の本が選ばれるわけではない。 一 般的に好まれるベストセラー、 世間で話題になっている本、利用者から購入のリクエストが寄せ られているもの、この地域のローカルな関心を惹きそうなもの、公共図書館として備えておく必 要のありそうなもの、またそれに加えて、この町の人たちに読んでもらいたいと私が個人的に希 望する本…....そんな中から注意深く書籍を選び、購入リストを作成する。 そして添田さんにその リストを見てもらい、彼女の意見を加味し(彼女は常に何かしら有益な意見を持っている)、 最 終的なリストを作成する。 添田さんがそれに従って実際の購入作業をおこなうことになる。


私がその日におこなったのは主にそんな作業だった。 真四角な半地下の部屋で、 赤々と燃える 薪ストーブに時折目をやりながら、鉛筆を片手に購入書籍リストをこしらえていった。 部屋が十 分暖かくなると、着ていた上着を脱ぎ、 シャツの袖を肘までまくりあげて仕事を続けた。


その作業に従事している間、部屋を訪れるものはいなかった。そこは私一人だけの世界だった。 時折席を立ってストーブに薪を足し、火の勢いが強くなりすぎないように給気口を調整し、近く の水道まで行って薬罐に水を足した。 そしてできるだけあの街と、あの図書館のことは考えない ように努めた。それらについて考えるのは危険だ。私はあっという間もなく深い幻想の中に引き ずり込まれてしまう。 ふと気がついたときには、私は机に頬杖をつき目を閉じて 手にしていた 鉛筆はいつの間にかどこかに消えている)、思考の迷路をあてもなく彷徨っている。なぜ私はこ こにいるのだろう、なぜ私はあちらにいないのだろう......と。


さまよ


ここはなんといっても私の職場なのだと自分に言い聞かせる。 ここで私は図書館長として


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げんそろ


さまよう PHO..