Created on September 11, 2023 by vansw

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まばら.


子易さんは強く背いた。


「もちろんですとも。 ここはあくまでわたくしどもの図書館の一部でありますし、ここで何をな さろうとそれはあなたのご自由です。 ああ、この薪ストーブはきっと気に入られますよ。なにし ろ静かで暖かいですから。 赤く燃え盛る炎を眺めておるだけで、身も心も芯から温まります」


子易さんと私はその真四角な部屋を出て、薄暗い廊下を戻り、添田さんの座ったカウンターの 前を通り過ぎ、人影まばらな閲覧室を抜け、二階の館長室に戻った。 来たときと同様、私たちが 前を通っても誰ひとり顔を上げなかった。


その日の午後ずっと、私はその真四角な部屋と、黒い旧式の薪ストーブのことを考えていた。 その翌日もずっと。


まっしっかく


정사각형.


ほのう


263 第二部