Created on September 11, 2023 by vansw

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やかに挨拶をした。 でもしばらくはマフラーも手袋もとらなかった。ただベレー帽を脱いだだけ


だ。


「この部屋は相変わらずうすら寒いですな」と子易さんは言った。「こんな小さなストーブひと つでは暖まりようもありません。もう少し大きなものを入れなくては」


「少し寒いくらいの方が、身も心も引き締まっていいかもしれません」と私は言った。


「これから本格的に冬が深まると更に寒くなりますし、そうなれば、「少し寒いくらいの方が』 なんてのんきなことは言ってはおられませんよ。 都会から来られた方だから、このあたりの寒さ がどんなものかご存じありますまい」


子易さんは両手の手袋をとり、折り畳んで上着のポケットに入れ、ストーブの前で両手をごし ごしと擦り合わせていた。 そして言った。


「館長を務めていました頃、わたくしがこの図書館で、どのようにして冬の寒さを乗り切ってい たと思われますか?」


「どうしてらしたんですか?」 そんなこと私には見当もつかない。


「この館長室はわたくしにはいささか寒すぎました」と子易さんは言った。 「わたくしはこの町 で生まれ育ったわりには、なんといいますか、けっこう寒がりなのです。ですから、ああ、冬の あいだは主にべつの部屋に待避して、そこで仕事をするようにしておりました」


「べつの部屋?」


「はい。ここよりはるかに暖かなべつの部屋があるのです」


「この図書館の中にですか?」


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・上水性外


추위를 잘타는 사람


寒がり