Created on September 10, 2023 by vansw

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リストを点検し、利用者の興味を惹きそうなものを選んで購入した。 新刊書購入にあてられる 月々の予算は、予想していたより潤沢であり(十分というほどではないにせよ)、そのことは私 を少なからず驚かせた。


書籍を扱うことは、私がこれまでの人生を通して日々行ってきたことであり、そのような新し い日常は私に新しい喜びをもたらしてくれた。 ここでは私に上司はいないし、ネクタイを締める 必要もない。 面倒な会議もないし、接待みたいなものもない。


添田さんや、パートの女性たちとこまめに話し合い、この図書館の今後のあり方について協議 した。私はいくつかのささやかな提案を行ったが、彼女たちは新しい方針や規則が生まれること をあまり好まないようだった。 すべてはこれまでどおりでいいではないか、利用者から何か苦情 が出ているわけではないのですから、と彼女たちは言った。だからあえて今までのやり方を変更 するまでもないでしょうと。とりわけインターネットの導入には全員が反対した。 要するに子易 さんが敷いた従来の路線を、このまま継続していきたいということだ。


しかし私が書架を積極的に整理し、 新たな方針のもとに蔵書を整え直していく言うなれば 近代化していく ことについては、彼女たちは自分からは感想も文句もとくに口にしなかった。 その作業はすべて私に一任されていた。 そんなことに彼女たちはとくに関心を払っていなかった、 というだけのことかもしれない。 書架に並んだ書籍のラインナップがどのようなものであろうが、 利用者がどんな種類の本を手に取っていようが、彼女たちにとってはどうでもいいことなのだろ うか折々ふとそんな印象を受けることがあった。 彼女たちはみんな熱心に仕事をしていたし、 この図書館で働けることを楽しんでいるように見えたのだが。


247 第二部