Created on September 10, 2023 by vansw
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半ばなかば
固辞さじ24.
丈たけ2201
みみたぶ
彼女がここの図書館長を務めるのが、どう考えても最良の選択ではないかと私は思ったし、子 易さんにもそのように言った。 これほど有能な女性がいるのなら、私みたいな素人の新人が上席 に座っていなくても、この図書館は問題なく維持されていくのではないでしょうか、と。
子易さんは少し困ったように私の顔を見ていたが、それから言った。 「わたくしも彼女に言っ たのです。 あなたがわたくしの跡を継いでくれるのがいちばん良いのではないでしょうかと。あ あ、しかしながら彼女は強く固辞しました。 自分は人の上に立つようにはできていないのだと。 言葉を尽くして説得はしたのですが、引き受けてはもらえませんでした」 「謙虚な人なのですか?」
「おそらくは」と子易さんはにこやかに言った。
添田さんはおおよそ三十代半ば、さっぱりとした顔立ちの、知的な印象を与える女性だった。 身長は一六〇センチくらい、体つきも顔立ちと同じように細身だ。姿勢がよく、 背筋がまっすぐ 伸びて、歩き方もきれいだ。 学生時代はバスケットボールの選手だったという。いつも膝下あた りの丈のスカートをはき、歩きやすい低いヒールの靴を履いていた。 化粧気はあまり(ほとん ど) ないが、肌は美しい。 耳たぶは丸く、 浜辺の小石のようにつるりとしていた。うなじは細い が、弱々しい印象はない。 ブラック・コーヒーが好きで、カウンター内の彼女のデスクには常に 大ぶりなマグが置かれていた。 マグには羽を広げたカラフルな野鳥の絵が描かれていた。見たと ころ、初対面の相手に簡単に心を許すタイプの女性ではなさそうだ。 その目には常に怠りなく 心深い光が浮かび、唇はきりっと挑戦的に結ばれている。 でも私は、最初に会って話したときか
ほそみ
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J'
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ようじん
フロント
怠ける
なまける