Created on September 10, 2023 by vansw

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びび


水を向ける訓


女(みずをむける


かざい


가재


私たちはその後、私がこの町の図書館の職に就くにあたっての、いくつかの実際的な案件につ いて話し合った。 今住んでいる都心のアパートを引き払い、この町に越してこなくてはならない。 その住まいを調達する必要があった。 もし任せてもらえるなら、適当な住居は当方で用意できる 」と思うと子易館長は言った。 この町には空き家はいくつもあるし、家賃は東京都心に比べれば 微々たるものだ。家財など、あとのことはなんとでも都合はつくだろう。


半時間ほどかけておおよその話が決まると、子易館長は椅子から立ち上がり、デスクの上の紺 色のベレー帽を手に取って、頭にかぶった。 用件があって、そろそろもと来た場所に戻らなくて はならないのだと言った。


もと来た場所に戻るというのはちょっと奇妙な表現だなと私は思った。 しかしもともと少し変 わった言葉遣いをする人物だったから、とくに気にはしなかった。


「素敵なお帽子ですね」と私は水を向けた。


館長は嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。 一度帽子を脱ぎ、じっくり眺め、念入りに形を整え てからかぶり直した。 ベレー帽はより親密に頭の一部になったように見えた。



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「ああ、この帽子はかれこれ十年前から愛用しております。 やむを得ぬこととはいえ、年齢とと もに髪が薄くなり、帽子なしでは何かとつらさを感ずるようになりました。とくに冬場は。 それ でフランスに旅行することになった姪っこに頼みまして、パリの一流店でベレー帽を買ってきて もらったのです。 若い頃はフランス映画が好きでして、昔からベレー帽に憧れておったものです から。まあ、このような僻地でベレー帽をかぶっているものといえばわたくしくらいのものでし



궁벽할 ㅂ


へきち


벽지


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