Created on September 10, 2023 by vansw
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ている言に貼er
「どうぞ、ああ、お入りなさい」という男の声が間を置かず中から聞こえた。まるでかなり前か らノックをじっと待ちかまえていたみたいに。
ドアを開けて中に入り、戸口で軽く一礼した。 こめかみが小さく脈打っているのが感じられた。 私は自分で予想していた以上に緊張しているらしかった。 面接を受けるなんて、大学生のときに 会社まわりをして以来のことだ。 自分がその時代、その年齢にもう一度戻されてしまったような 気がした。
部屋はそれほど広くなく、ドアの真向かいに縦長の窓があり、そこから陽光が差し込んでいた。 ての窓を背にして古い大ぶりなデスクがあり、そこに男が座っていた。しかし光の影になって、 相手の顔をはっきり見定めることができなかった。
「お邪魔いたします」と私は戸口に立ったまま、乾いた声で言った。 そして名を名乗った。
「どうぞ、お入りなさい。 お入りなさい。 お待ちしておりました」とその男は言った。 森の奥で 見知らぬ動物に語りかけるような、穏やかなバリトンの声だった。地方の訛りは聞き取れない。 「そこの椅子に、ああ、お座りください」
椅子はデスクのこちら側にあり、私たちはまっすぐ顔を合わせる格好になった。しかし彼の顔 は相変わらず日差しの影の中にあった。椅子に座っていたから、背丈まではわからなかったが、 どうやら大柄な男ではないようだ。 丸顔で、どちらかといえば肥満気味であるらしい。
「こんな遠方までよくお越しくださいました」と男は言った。そしてひとつ軽く咳払いをした。 「さぞ時間がかかったことでありましょう」
あ
こめかみ 216
분과위의 중간. 관자놀이
肥満
ひまん
4521
せたけ
A