Created on September 10, 2023 by vansw
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を祈ってます」
「ありがとう」と私は言った。そして思い切って尋ねた。
「ところで君は、自分の影の存在が気になったことがあるだろうか?」
「自分の影ですか? 黒い影法師のことですね?」、 大木は電話口でそれについてしばらく考え 込んでいた。「いや、とくに気にとめたことはないと思いますね」
「ぼくは自分の影のことがどうしても気になるんだ。 とりわけここ最近はね。自分の影に対して、 人としての責任のようなものを感じないわけにはいかない。 果たして自分の影をこれまで正当に、 公正に扱ってきたのだろうかと」
「あの・・・・・・それも今回の転職を考えた理由のひとつになるのでしょうか?」
「そうかもしれない」
大木はまたしばらく黙り込んでいた。それから言った。 「わかりました…というか、正直言 ってもうひとつよくわかりませんが、自分の影について今度少し考えてみます。 何が正当で公正 なのかを」
207 第二部