Created on September 09, 2023 by vansw

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う。少し時間はかかるかもしれません。 一口に地方都市の図書館といっても星の数ほどあります


から。たとえ内陸部に限っても」


「時間ならたっぷりあるよ」


「他に何かご希望はありますか?」


できれば薪ストーブがある図書館がいいなと言いたかったが、むろんそんなことは言わなかっ た。今どき薪ストーブを使っているような図書館はたぶんどこにもあるまい。


「とくに希望はない。 働ければいいんだ」


「ところで、図書館の司書の資格みたいなものはお持ちでしょうか?」


「いや、そんなものは持っていない。 持っていないとまずいのかな?」


「いいえ、そうとは限りません」と大木は言った。「資格が必要とされるかどうかは、図書館の 規模とか職種によって異なります。 ただこれは余計なことかもしれませんが、そういうポジショ ンは、もし仮に見つかったとしても、報酬はあまり期待できないと思いますよ。 ひょっとしたら ボランティア並みの薄給かもしれません。 それでもかまいませんか?」


「かまわない。今のところ経済的に困ってはいないから」


「わかりました。 調べてみましょう。 何かわかったら連絡します」


私は自宅の電話番号を彼に教え、礼を言って電話を切った。


大木にとりあえず下駄を預けたことで、予想していた以上に気持ちが楽になった。 どのような 結果が出るかはわからないが、少なくとも状況が僅かなりとも動き始めているという感触は、私


201 第二部