Created on September 09, 2023 by vansw
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あるいは実務的な細部にこだわりすぎているか、どちらかだ。
一週間ばかりそのような無益な努力を重ねた後に、外部から情報を採取することを諦め、自前 の記憶が与えてくれる情報に立ち戻ることにする。 私があの長い夢で目にしたのは、私のイマジ ネーションがそこで細かく示唆してくれたのは、どのような図書館だったのだろう?
さかのぼ
私は夢を見た直後に記録したノートを読み返し、 もう一度頭の中にその図書館の風景を蘇らせ る。その場所のありかを教えてくれるヒントのようなものが見当たらないかと、記憶を遡る。 人々の話し声、壁に貼られたポスター…しかしそんなものは見当たらない。人々は寡黙であり (なにしろそこは図書館なのだ)、貼り紙の細かい字は遠すぎて読み取れない。しかしそこが東京 からかなり遠く離れた場所であることだけはなぜかわかる。 その空気の肌触りからおおよそ推測 がつく。
夢の中で自分が仕事をしていた部屋を、意識の焦点を絞って、もう一度丹念に眺め回してみる。 大事なものを見逃したりしないように。
奥に深い長方形の部屋で、床は板張り、ところどころに半ば擦り切れた絨毯が敷かれている (新しいときにはそれなりに素敵なものだったかもしれない)。奥の壁には縦長の窓が三つ並んで いる。階下の窓と同じように古い真鍮の金具がついている。天井には蛍光灯。 窓際にこちら向き に置かれた執務用のデスクの上には、古びたライトスタンド、 書類入れ、日めくり式のカレンダ 旧式の黒い電話機、陶器のペンケース、 使われた形跡のないガラスの灰皿(クリップの容れ 物になっている)、そして隅っこにはあの紺色のベレー帽が置かれている。 入り口の近くに四脚
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はだざわり
촉감 감촉