Created on September 09, 2023 by vansw
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れてしまったりしないよう、まだ記憶が生々しく鮮やかなうちに、手元のノートにその内容を思 い出せる限り詳細に書き留めた。 ボールペンの細かい字で、何ページにもわたって。その夢は私 に対して、何か大事なことを示唆しているように思えたからだ。 その夢は疑いの余地なく、私に 何かしらを教えようと試みていた。まるで親しい個人間で心を込めたメッセージが交わされると きのように、とても親切に具体的に噛み砕いて。
やがて窓がすっかり明るくなり、 鳥たちが賑やかに鳴き始める頃になって、私はひとつの結論 を得た。
私には新しい職場が必要なのだ。
少しずつでも動き出さなくてはならない。 いつまでもここに重く留まっているわけにはいかな い。そしてその新しい職場とは、そう、図書館以外にはあり得ないではないか。図書館以外に、 私の行くべき場所はない。 こんな簡単なことに、なぜこれまで気づかなかったのだろう?
私はようやくどこかに向けて動き始める。新たな慣性を得て徐々に前進を始める。 生々しく鮮 やかな夢に強く後押しをされて。
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