Created on September 07, 2023 by vansw

Tags: No tags

167


24


午後になって雪が降り始めた。 風のない空から無数の白い雪片が音もなく街に落ちてきた。 ゆ っくり宙を舞う軽い雪ではない。 雪片はそれぞれの堅い重みを持ち、つぶてのように直線を描い て地表に達した。


私は住居を出て西の丘を降り、急ぎ足で門に向かった。道ですれ違う獣たちは背中に雪のかけ らを凍りつかせ、諦めたように目を伏せ、白い息を吐きながら緩慢に歩を運んでいた。この数日、 寒さは一層厳しくなり、餌になる木の実や木の葉はますます乏しくなっていた。更に多くの獣た ちが命を失っていくことだろう。 弱いものたちから順番に。


北の壁の外には灰色の煙がいつにも増して太く、勢いよく強く立ち上っていた。 門衛は今日も 忙しく獣たちの死体を集めて焼く作業に取り組んでいるようだ。 煙は空に向けて直線を描いて上 がり、まるで巻き上げられる太いロープのように、厚い雪雲の中に吸い込まれていった。 獣たち には気の毒だが、その死体の数が多ければ多いほど門衛の仕事は増えるし、そのぶん時間を稼ぐ ことができる。


小屋に門衛はいない。しかしストーブは赤々と燃え続け、無人の部屋を温めている。 作業台の


167 第一部