Created on September 07, 2023 by vansw
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ぼくを見おろしている。頭をつるつるに剃り上げた、大柄な男だ。奇妙な衣服をだらしなく重ね 着して、手にはシャベルのようなものを持っている。
「おい、あんた」と彼はぼくに太い声で呼びかける。 「どうしてそんなところにいるんだね?」 それが現実なのか夢なのか見定めるために、少し時間を必要とする。 暑くもなく寒くもない。 新鮮な草の匂いがする。はい。
「どうしてこんなところにいるんだろう?」とぼくはとりあえず男の質問を繰り返す。
「そうだよ。俺がそう質問しているんだ」
「わからない」とぼくは答える。その声は自分の声に聞こえない。「ここはいったいどこなんだ ろう?」
「あんたの寝転んでいる場所のことかね?」と男は明るい声で言う。 「どこから来たか知らんが、 悪いことは言わん。 早くそこから抜け出た方が身のためだぜ。 そこは死んだ獣たちを放り込んで、 油をかけて焼くための穴だからね」
THE FEZA
San
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