Created on September 04, 2023 by vansw

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合しながら棚からそれらの夢を選び出し、私の前に置く注意深くそっと。一晩かけて三つの 夢を読み切れるときもあれば、二つしか読めないこともある。 読み取るのに長い時間を要する夢 もあれば、比較的短く終わってしまう夢もある。 均していえば、サイズの大きなものほど時間は かかるようだ。しかしこれまで三つより多くの夢を読めたことはない。現在の私の力では、一日 に三つを読むのが限度だ。 読み終えられた夢は、君の手で更に奥にある部屋に運ばれる。 それが 元の棚に戻されることはない。 読み終えたあとの古い夢がどのような扱いを受けるのか、知りよ うもない。


しかし毎日欠かさず三つずつ古い夢を読み込んだとしても、書庫の棚にずらりと並べられた古 い夢を読み切るには、私のおおまかな計算によれば、少なくとも十年を要するはずだ。 そしてこ こに並べられているのが古い夢の「在庫」のすべてだという確証はない。また古い夢が日々新た に補充されていないという確証もない 君が運んでくる古い夢について言えば、その埃の積もり 具合からして、かなり古いもののようだが)。しかしそんなことを考えてもらちはあかない。私 にできるのは、目の前に置かれた夢をひとつひとつ読み解いていくことだけだ――その理由も目 的もじゅうぶんに理解できないまま。


私の前任者たち、つまり私の前にここにいたであろう夢読みたちもまた、私と同じように説明 らしい説明も与えられず、その行為の意味も把握できないまま、来る日も来る日もただひたすら 古い夢を読み続けていたのだろうか? 彼らはその職務をまっとうできたのだろうか? そして、 そう、彼らはどこに行ってしまったのだろう?